首都圏青年ユニオン分会の飲食店ユニオンの組合員は現在、株式会社フジオフードシステムと、【コロナ禍での休業手当未払いや正規・非正規の差別】を巡り裁判を行っていますが、裁判事案とは別に、団体交渉も続けています。
♦着替え時間は労働時間?
当該組合員が勤務するカフェでは、勤務開始前に、【カフェが入居する商業施設内の更衣室で会社指定の制服に着替えてから出勤記録を付け、勤務終了後は退勤記録を付けてから私服に着替える】という流れになっており、着替え時間に対する賃金は支払われていません。
労働時間の定義については、労働基準法第32条で「労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」といった内容の記述がされています。
この条文からしても、【会社指定の制服への着替え】【カフェに在籍する全従業員が使用している施設内更衣室での着替え、及びその際の移動時間】も労働時間だと捉え、賃金が支払われるべきであると私たちは考えています。 実際に多くの裁判例で着替え時間が労働時間だと認定され、賃金の支払いが命じられています。
当該組合員が実際にタイマーで測り、施設内の更衣室と店舗間の移動時間、制服の着脱にかかる時間を計算したところ、1日あたりの着替えに関わる時間はおよそ30分となりました。(なお、このカフェが入居する商業施設は、総面積37,000㎡を超え、約160のテナントからなる広大な施設であり、更衣室や店舗までの移動に距離があること、また、制服に関しても全身着替えた上に髪をまとめ、バンダナまで巻く必要があり、一般的な飲食店舗における着替え時間よりも多くの時間がかかります。)
時給が1120円(過去2年の間には、最低賃金の関係で1000円や1020円だった時期もあり)のため、着替えの発生時間を時給に換算すると、1日あたり558円の未払い賃金が発生していることになります。仮に、週に3日、月に12日勤務していたとすると、1か月6696円となり、1年間で約8万円にもなります。 1回1回の時間は短時間とは言え、積み重なると馬鹿に出来ない金額になります。
飲食店ユニオンと組合員らは、半年以上前から、会社との団体交渉で着替え時間に対する未払い賃金について、支払うよう求めてきました。会社は当初、それらについて一切認めない姿勢を見せていましたが、直近の団交においては「制服に着替えることについては会社として義務付けをしている」と認める発言をしました。
しかし、「更衣室で着替えることは必ずしも義務付けてはいない」「家から着てきて、制服のまま帰ったって構わない」との主張をし始めました。しかし、この店舗がオープンしてからの約6年、制服を家から着てきてそのまま勤務し、制服のまま帰るという運用は全くされてきませんでした。
さらに、入店説明の際には、店長やエリアマネージャーから更衣室とロッカーの案内をされ、「ここで着替えてからお店へ出勤してください」と指示も出されています。文書での配布こそないものの、実態としてこれまで6年もの間、【更衣室で着替える】という運用がなされていたにも関わらず、団交の場で初めて「家から着てきてそのまま帰っても構わないと考えている」「いいとも悪いともルールがない、どちらでも構わない」と主張するのは、単なる屁理屈ではないでしょうか。
一方で、フジオフードは『今後の勤務については、出勤退勤の付け方をこれまでのやり方から変更させる意向(着替える前に出勤記録を付け、そこから更衣室で着替え、勤務終了後は着替えを終えてから退勤記録を付ける)』を示してきました。
着替え時間を労働時間に含むようにするというのですが、着替え時間が労働時間だと認めざるを得ないということでしょう。しかし、過去の勤務(未払い)に関しては、支払うつもりはないと拒否しています。
♦行政指導を求めて労基署へ申告
過去の未払い賃金について、団交の場での議論は平行線になり決裂してしまったため、当該組合員は労働基準監督署へ未払い賃金請求として申告することにしました。現在は労基署と当該組合員、会社の三者でやり取りをしているとのことです。
近年の労基署は、会社に是正指導することを過剰に抑制する傾向にありますが、労基署にはぜひ、会社の言い分を鵜呑みにせず、実態に即して是正指導をしてほしいと思います。
フジオフードシステムとはこの他にも、年次有給休暇や小学校休業等対応助成金の運用を巡る交渉なども行っていく予定です。ユニオンとしても、今件の着替え時間に関する交渉だけでなく他の件の進捗についても、今後も随時報告をしていけたらと考えています。
全国のフジオフードシステムで働く皆さまの中にも、共に交渉へ参加していただける方や、職場環境改善のために声を上げたい方、また、ユニオンへ加入しなくとも、情報提供などもありましたら、ぜひご連絡をお待ちしています!
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